「親の介護が始まったけれど、このまま仕事を続けられるか不安でたまらない」「職場に相談したくても、どこまで制度を使えるのかよくわからない」——そんな悩みを抱えながら、日々仕事と介護の板挟みになっている方は少なくありません。
実際、日本では年間約10万人が介護を理由に離職していると報告されており、その多くが「制度の存在を知らなかった」「申請の方法がわからなかった」と後悔しています。しかし2025年、この現状を大きく変える可能性を持った介護離職防止のための両立支援制度の改正が施行されました。
この記事では、次の内容をわかりやすく解説します。
- 2025年施行の介護離職防止の両立支援制度の具体的な内容
- どんな人が対象になるのか
- 申請の流れと企業側に求められる対応
- 制度を活用するうえでの注意点と実践的なアドバイス
仕事を辞めずに介護と向き合うための選択肢を、ぜひこの記事で整理してみてください。
なぜ今、介護離職防止の制度が強化されたのか
日本社会は急速に高齢化が進んでおり、介護が必要な家族を抱える働き世代が急増しています。これまでも育児・介護休業法をはじめとした制度は存在していましたが、現場では「制度はあっても使いにくい」「上司に言い出せない」という声が絶えませんでした。
特に問題とされてきたのが、介護が突然始まるという点です。育児と違い、介護は予告なく始まり、しかも終わりが見えません。そのため、事前に準備できないまま離職に追い込まれるケースが後を絶ちませんでした。
こうした背景を受けて、2025年に施行された改正では「介護に直面した労働者が離職を選ばなくて済むように」という明確な目的のもと、企業に対してより具体的な対応義務が課されることになりました。
2025年施行の介護離職防止の両立支援制度について教えてほしい方へ:制度の全体像
今回の改正のポイントは大きく3つに分けて整理できます。①個別周知と意向確認の義務化、②柔軟な働き方の選択肢の拡充、③情報提供体制の強化です。それぞれを具体的に見ていきましょう。
①個別周知と意向確認の義務化
これまでは、介護に関する制度の案内は「会社の規定を見てください」という程度にとどまることが多く、実際に制度を知らないまま離職してしまう労働者が多くいました。2025年の改正では、従業員が「介護が必要な家族がいる」と会社に申し出た時点で、企業は個別に制度の内容を説明し、意向を確認する義務が生じます。
つまり、「知らなかった」という状況を会社側が防ぐ責任を負うことになったのです。これにより、従業員は制度の存在を受動的にでも把握できる仕組みが整いました。
②柔軟な働き方の選択肢の拡充
介護をしながら働き続けるためには、時間や場所の柔軟性が欠かせません。改正では、介護休業だけでなく、短時間勤務・フレックスタイム・テレワーク・時差出勤など、複数の柔軟な働き方から選べる仕組みを整備することが企業に求められます。
介護の状況は人によって異なります。毎週決まった曜日に通院同行が必要な方もいれば、突発的な対応が多い方もいる。そのような多様なニーズに応えられるよう、一律の対応ではなく「選択できる制度の整備」が義務の軸に据えられています。
③情報提供体制の強化
改正前は、介護に関する社内制度を知るためのハードルが高く、人事部門に直接聞きにいくことへの心理的抵抗もありました。新制度では、会社が介護に関する制度一覧を整備・公開し、労働者がアクセスしやすい環境を整えることが求められます。
社内イントラや就業規則の更新だけでなく、研修や管理職への周知も含めた体制整備が必要とされており、「制度はあるが誰も知らない」という状況の解消が期待されています。
制度の対象者は誰か
今回の改正による義務は主に企業側に課されるものですが、制度を利用できる労働者の範囲については以下のような基準が設けられています。
- 介護が必要な家族(配偶者・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫など)がいる労働者
- 雇用形態は正社員だけでなく、一定条件を満たすパートタイム労働者・有期雇用労働者も対象
- 介護休業の場合、同一の家族に対して通算93日・3回まで取得可能(従来の規定も継続)
重要なのは、介護休業を取得するかどうかに関わらず、仕事と介護の両立に悩んでいるすべての労働者が、会社から情報提供を受ける権利を持つという点です。「まだ休む必要はないけれど、将来が不安」という段階であっても、制度の説明を求めることができます。
申請・相談の具体的な流れ
制度を活用するうえで、多くの方が最初に悩むのが「どこに、どう相談すればいいのか」という点です。以下のステップを参考にしてみてください。
- 職場の人事部門または上長に介護の状況を伝える:正式な申請の前に、まず状況を共有することが出発点です。改正により、この段階で会社は説明義務を果たす必要があります。
- 会社から制度の説明を受け、意向を確認してもらう:どの制度が自分の状況に合っているかを確認します。柔軟な働き方の選択肢を複数提示してもらえるはずです。
- 必要な制度を選択し、書面で申請する:介護休業・短時間勤務・テレワーク等の申請は、原則として書面(または電磁的記録)での手続きが必要です。
- ケアマネジャーや地域の相談窓口とも連携する:仕事の制度活用と並行して、介護そのものの体制を整えることが両立の鍵になります。
なお、会社が正当な理由なく制度の利用を拒んだり、不利益な取り扱いをした場合は、労働基準監督署への相談や法的な対応も選択肢に入ります。制度は「お願いして使わせてもらうもの」ではなく、権利として活用できるものという認識を持つことが大切です。
企業が対応すべきポイント:管理職・人事担当者向け
今回の改正は、企業にとっても対応が急務となっています。制度を整備するだけでなく、実際に使える職場環境をつくることが求められています。
管理職に求められる意識の変化
「介護は個人の問題」という意識から脱却し、チームで支え合う体制を整えることが重要です。部下から介護の話が出たときに適切に対応できるよう、管理職向けの研修や情報共有の場を設けることが効果的です。実際に、管理職が制度に詳しくないために申請をためらう労働者が多いという実態があります。
制度の「見える化」と利用しやすい雰囲気づくり
規定を整備するだけでなく、社内で「介護休業を取得した先輩がいる」「相談しやすい窓口がある」という雰囲気を醸成することが、離職防止に直結します。制度が紙の上だけに存在する状態では、結局誰も使えないというのが現場の実態です。
制度を使っても限界を感じたとき——経験者の知恵が支えになる
制度をうまく活用できたとしても、介護と仕事の両立は決して楽ではありません。精神的な疲弊、周囲への申し訳なさ、先の見えない不安——こうした感情は、制度だけでは解消できないことがほとんどです。
そんなとき、同じ経験をした人の言葉は、どんな情報よりも力を持ちます。実際に介護離職を経験し、その後再就職や別のキャリアを歩んだ方々の知見は、今まさに悩んでいる方にとってリアルで具体的な道標になります。
私たちのコミュニティでは、介護離職を経験された方々が自らの体験や知識を活かして関わっており、「制度の使い方はわかったけれど、実際どうすればよかったのか」「離職後のキャリアをどう立て直したか」といった、公的な情報だけでは得られない生きた情報を共有しています。
介護離職の経験は、決して無駄ではありません。その経験を誰かの役に立てたい、あるいはそういう人たちとつながりたいという方には、ぜひ一度コミュニティの場を覗いてみていただきたいと思います。
まとめ:2025年の制度改正を「使える知識」に変えるために
2025年施行の介護離職防止の両立支援制度について教えてほしいと感じている方に向けて、この記事では制度の全体像から申請の流れ、企業の対応義務までを整理してきました。改めてポイントを振り返ります。
- 企業には個別周知・意向確認の義務が新たに課された
- 介護休業だけでなく、多様な柔軟勤務の選択肢を提示することが求められる
- 制度は「申請できる権利」として労働者が主体的に活用できる
- 申請は段階的に進め、社内外の相談窓口を併用することが効果的
- 制度の整備と並行して、職場の雰囲気づくりが離職防止の鍵を握る
制度を知ることは、離職を防ぐための最初の一歩です。しかし、制度を知っただけでは解決しないことも多いのが現実です。一人で抱え込まず、同じ経験をした人たちの声に耳を傾けることも、前に進むための大切な手段のひとつです。
介護と仕事の両立に悩んでいる方、あるいはすでに離職を経験されて次のステップを模索している方は、ぜひ私たちにご相談ください。あなたの状況に合った情報や、経験者とのつながりをご提供できます。
まずはお気軽にお問い合わせいただくことから始めてみてください。